No.203 人生において「健康」とは何か？

人生について改めて考えると、「そもそも何を目指して生きているのか？」という問いに行き着きます。山口周さんの『人生の経営戦略』では、その答えをとてもシンプルに、そして本質的に示しています。それが、「時間資本を適切に配分し、持続的なウェルビーイングの状態を築くこと」。
もっと噛み砕けば、いつ余命宣告をされても「自分らしい、良い人生だった」と心から思える生き方をする、ということです。

ここで重要なのが「持続的」という言葉。
短い間だけ幸せでもダメで、死ぬ直前だけ満足していてもダメ。その“良い状態が続いていること”こそが、人生の質を決める決定的な要素になります。実はこれ、幸福学の研究でも同じことが語られていて、私たちの脳は“瞬間的な幸せ”よりも“安定した安心感”をより強く求める性質があるとされます。面白いですよね。

では、この「持続的なウェルビーイング」をつくるために、何が最も重要なのか。
ここで多くの人は、「お金」「人間関係」「やりがい」などを思い浮かべるでしょう。もちろんそれらも大切なのですが、土台となるもっと根本的なものがあります。

そう、「健康」です。

ただしここで勘違いしてはいけないのが、健康は「目的」ではなく「手段」だということ。
健康そのものをゴールにしてしまうと、いつのまにか数字に振り回されたり、苦行のようなトレーニングを続けたり、「健康のためなら死んでもいい」みたいな本末転倒に陥ることがあります。健康の本当の価値は、人生の目的である“持続的なウェルビーイング”を可能にするための基盤である点にあります。

例えば、好きな音楽を聴きにライブへ行く。旅先で初めての景色に触れる。家族や仲間とゆっくり食事を楽しむ。
これらはどれも人生の幸福度を確実に上げる体験ですが、体調が悪い日はその喜びが半減してしまいます。逆に、健康状態が安定していれば、「やりたいことを選べる自由度」が大きく広がり、その自由度こそが人生の豊かさを形づくります。

ここで少し豆知識を。
医療経済の分野では「健康は投資である」という考え方があります。治療は“コスト”ですが、予防や習慣づくりは“投資”。投資は早ければ早いほど複利で効きます。まさに人生全体のリターンを高める行為なんですね。この視点で見ると、運動や休養、栄養を整えることが「未来の幸福への積立」だと感じられるはずです。

結局のところ、人生の質は「時間を何に使ったか」で決まる——これは多くの哲学者も同じ結論に辿り着いています。そして、その時間を自分らしく使い続けるために必要なのが健康なのだと考えると、“予防”や“習慣づくり”の意味ががらりと変わってきます。

健康であることは、人生を最大化するための土台。
だからこそ、健康を「目的」ではなく、「自分らしい人生を送るための重要な手段」として捉え直すことが、これからの時代を生きる上で欠かせない視点なのだと思います。