No.204 シニアのトレーニングについて

「80代の人って、どんなトレーニングをするんですか？
若い人とは、やっぱり全然違うんですよね？」

SALUSでよく受ける質問の一つです。
そして私の答えは、いつも同じ。

「一緒です」

そう言うと、ほとんどの場合、少し驚かれます。
世の中には「シニア体操」「高齢者向けトレーニング」といった言葉が溢れているので、年齢ごとにやることが違うのが当たり前だと思われているからでしょう。

でも、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。

私たちは、この世に生まれた瞬間から死ぬまで、例外なく1G（重力）の環境下で生きています。
65歳を超えたからといって、急に足が一本なくなるわけでも、腕の筋肉が一つ欠けるわけでもありません。

つまり、10代だろうが80代だろうが、
この地球上で生活する上で「人間として求められる基本的な能力」は本来、変わらない。

立つ、歩く、しゃがむ、物を持つ、姿勢を保つ。
これらは年齢によって別物になるものではありません。

もちろん、年齢を重ねれば、若い頃より低下する機能はあります。
筋力、反応速度、回復力。
それは自然なことで、悪いことでも、異常なことでもありません。

ただし重要なのは、低下の仕方は人それぞれだということです。
同じ60代でも、大きく落ちている人もいれば、ほとんど変わらない人もいる。
年齢という数字だけで「やること」を分ける理由は、実はどこにもありません。

とはいえ、10代と80代が「まったく同じことを、まったく同じ条件で」できるわけでもありません。
理解のスピード、集中が続く時間、回数、精度。
そこには確かに違いがあります。

だからSALUSでは、「種目」は変えませんが、制約を変えます。
負荷、回数、テンポ、可動域、正確さ。
同じ動きを、違う条件で行うだけ。

やるのはあくまで、「どの人間にも共通して必要なこと」。
その上で、その人に合わせて強度を調整する。

年齢で分けるのではなく、人として見る。
実はそれが、一番シンプルで、一番安全で、一番長く続く考え方なのだと思っています。

もしあなたが
「もう歳だから」と無意識に線を引いているとしたら、
一度その前提を疑ってみてください。

体は、思っているよりずっと、正直です。